2021/07/10 15:41

プロを相手にしている私たちにとって、基礎知識というものは非常に重要。

 

国内の資格程度で満足していては三流。

 

良いサプライヤーとなる為には、資格を取った後でも、いかに勉強を重ねるかが非常に大事であると考えています。

 

私は、学生時代に国内のワイン資格を取得しましたが、資格取得後に現在のワインアドヴォケイトの編集長であるマスター「リサ・ペロッティ・ブラウンMW(当時はまだディプロマホルダーでした)」の講義を受け、日本の資格レベルを把握できた点、六本木(麻布十番?)の「ル・セップ」にてマルセル・ラピエールやピエール・オヴェルノワ等に早くから出会えた点がとても大きかった。

 

ジュール・ショヴェに師事したマルセル・ラピエールは「ワインに対するあらゆる化学を知ることで、あらゆる化学からワインを守る。」と言っており、ワインを数多く取り扱う酒販店の担当者でも、基礎知識が乏しい方が多いのが現状(私もまだまだですので、間違ってたら教えてください。)

 

私共は、今後オーガニックアプローチを採用している生産者を多く取り扱いますが、状態を見極める事が非常に難しいと言われているナチュラルワインを取り扱うからこそ、相対的なワインの知識を頭に入れておかなければならないと考えています。

 

今後、自身のおさらいの為にもワインに関する基礎知識をあまり細かくなりすぎないように少しづつつぶやいていこうと思っています。

 

ワインの酸について・・・

 

ワインに関する「酸」はワインになる前のジュースとワインの両者にとって、最も重要な成分の一つで、ブドウ由来の固定酸(fixed acid)と醸造由来の揮発酸(volatile acid)の合計。

 

主要なブドウ由来の有機酸は3つ。

 

酒石酸(tartaric acid

リンゴ酸(malic acid

クエン酸(citric acid)

 

この3つの有機酸が糖・アルコール等他の成分とバランスを取って構成され、この3つの酸が発酵由来の酸である

 

酢酸(acetic acid

酪酸(butyric acid

乳酸(lactic acid

コハク酸(succinic acid

 

等と結合し、ワインの色の安定等に影響を与えています。

 

ピノ・ノワールのように酸度の高いブドウだとワインの色が鮮明になり、シラーのように酸度が低いブドウになるにつれて色合いが濃くなっていきます。

 

天然由来の酸(酒石酸tartaric、リンゴ酸malic、クエン酸citric)は新鮮で純粋な味を作り出しますが、発酵由来の酸(酢酸acetic、酪酸butyric、乳酸lactic、コハク酸succinic)はより穏やかで複雑です。

 

料理の組み合わせにもワインの酸は、非常に重要です。

 

一般的に言われているのが、ワインの酸味と食べ物を組み合わせるときは、同等以上のものが重要。ワインは常に食べている食べ物と同じかそれ以上に酸性でなければならないと言われています。ワインの酸よりも料理の酸が強いと、ワインの味わいは緩く、平らな味わいに感じます。

 

例を挙げると、世界一のレストランに輝いたコペンハーゲンの「noma(ノーマ)」で食事をした際に驚いたのが、出てくる一皿一皿の酸度が非常に高かった点。

ノーマは、ソムリエによるアグレッシヴなワインペアリングも非常に有名ですが、ペアリングされるワインも非常に酸度の高いワインが出てくる傾向が見られました。

 

生産者がブドウ果汁やワインの酸を測る際は、phTAを見ています。

 

ph(ペーハー)は、溶液中の水素イオン濃度を表す数値です。数値が高いほどアルカリ性、低いほど酸性となります。Phの数値は、使用する酸化防止剤の量にも大きく影響を与える為、ナチュラルワインの生産者は、果汁の時点で数値を測り、最低限の投与量を決定しています。(勿論、自身の味覚で判断する生産者等は、測らない人もいます。)

平均的なphの数値は白ワインで3.0-3.3、赤ワインで3.3-3.6phの数値は僅か0.1の違いで投与する酸化防止剤の量が大きく変化する為、酸化防止剤の投与に敏感な生産者は非常に重要視しています。実際にドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティやドメーヌ・デュジャック等、近年増加しているホールバンチプレス(全房圧搾)を採用する生産者は、果梗と一緒に圧搾する事で抽出されるジュースのphを下げる、酸化防止剤の投与量を減らす効果も考えています。)

 

TAは酸度を表します。ワインの表現に総酸(total acid)が使われる事がありますが、実際は、総酸は測る事が難しい為、適定法を用いて水素イオン濃度と共に測定する滴定酸度(titratable acid)を近似値として使っています。